star vase

あふれることばたち

ハレの場にて/舞台「サザエさん」感想

博多座サザエさんがやってくるというので、軽率に行ってきました。
楽しかった〜〜〜!!!!!
笑って泣いて楽しんで、心が満腹!よい舞台でした。
www.sazaesan-stage.jp
舞台「サザエさん」@博多座/ワカメ役:齊藤京子さん

あ、ジャンケンは勝ちました!やったね!

以下、ネタバレ含みます。

非日常の博多座

久しぶりの博多座
休憩時間に飲食していいのを思い出して、そうだった〜〜!となりました。
やっぱり観劇はハレの日だなあって改めて思いました。着飾っておめかしして、空間を楽しんで。
幅広い年齢層の方がそれぞれお洒落で、ありていに言えばショッピングに行く服装ではない。観劇のためのフォーマルな着こなしをしている。赤いドレスの女性やスーツを着こなした男性、和装の方やワンピースを着たご高齢の方々。
劇場の中で食べるお弁当もお茶もビールも、特別な味がするはず。博多座はロビーがお土産や飲食を含む売店で賑わっていて、まるでお祭りです。見るからに非日常の空間!明治座は行ったことないのですが、似たような感じでしょうか…?
かく言うわたしも前日に新しいネイルポリッシュを買い込んで、新しいネイルに挑戦して、いつも以上にヘアセットに力を入れました。どれもこれも推しのバーイべの予行練習を兼ねているのだけど!
最近はターゲット層が絞られたいわゆる2.5次元舞台ばかり観ていたので、こういった全世代・市民をターゲットにした舞台作品を久しぶりに体感したことで、観劇はやはり誰にとっても非日常の場であると実感できました。というか、わたしはそのお祭りスタンスが好きなんだなあってことに気付かされました。これからも観劇は一回一回を全力で楽しむぞ~~!

どこにでもいる家族の10年後

さーて、10年後のサザエさんは〜?

・それぞれにある未来
・けっこうヘビー
・10年経っても黒電話

の3本です!!(感想)

30分休憩を2回挟む、3部構成でした。最初はえっ2回も休憩あるの…?!と思いましたが、思えばアニメも3部構成ですよね。そこまで再現しているんだ…!!と考えましたが、えっ意図的だよね…?
さて、舞台版サザエさん、10年後のサザエさんですが、なかなかにシリアスなお話でした。サザエさんの10年後を本気で問うていた。現実という壁にぶち当たっていた。
カツオとワカメは進学してそれぞれ勉学*1やアルバイト*2で忙しく家に帰る時間は遅くなり、高校受験真っ只中のタラちゃんは塾に行くか部屋にこもって勉強、マスオさんは出世してやはり帰宅時間が遅く、フネさんは家のことでずっと動き回っている。あとタマの言葉がわかるようになる(?!)。そして定年退職し、家にいるばかりの波平さん。10年前のように皆で顔を合わせて食事をすることも減った。
げ、現実が過ぎる…。
何も変わらないのはサザエさんだけです。それとおじいちゃん猫になったタマ。
変わらないからこそ、ストーリーのキーになるのはやはりサザエさんとタマでした。

10年経てば変わるのもやむを得ない。けれどやっぱり寂しい。変わることはあれどその都度笑って決めていこうというのが今作の結論でしたが、しんみりと変化を受け入れるのは寂しいですよね。しんみりとバラバラになっていく家族を見て、タマはふらりと家を出ていきます。家族から離れてそれぞれの生活を送る一人一人を、寂しそうに振り返りながら。タマがいなくなったことは、まるで何かの象徴でした。

いよいよ一家がバラバラになりそうだ、そんな家族会議が始まる前の夕暮れにこの家で過ごした日々を回顧するのはサザエでした。そして、沈んでても仕方ない、テレビを見よう。…と、テレビをつけるとわたしたちがお茶の間で日曜日の夜6時半に聞いた音楽が流れ始め、あの世界がサザエのいる舞台上に飛び出してくる。そのスイッチをつけたのはサザエさんです。この作品の主人公であり軸なんですよね。

ところで10年前の原作軸のあの家族が出てくるパフォーマンスがサプライズ過ぎる!ものっっすごいテンションが上がりました。ウワー!!となりながらずっとカツオを見てた。マイクオフでずっっっっと何か喋ってるんですよね。絶えず喋っててすごかった。B列でわりと聞き取れて楽しかったです。ワカメちゃんは顔がひたすらにかわいくて、あのまま小学生の役やってても違和感ゼロで唯一10年後である必要なかったキャスティングだなあって思いました。推しのランドセル姿が見れるの楽しいだろうな~~!いいな~!!

そして家族会議、来年の春には皆バラバラに過ごすことになるという結論になり…かけます。和解はしたものの、なんだかしんみり。すると、いなくなったタマが戻ってきます。皆がタマに飛びついてあのお茶の間は再び賑やかに。そこで、今すぐバラバラになる必要はない!しんみりしないで、笑いながら、その都度それぞれの未来を決めていこう!そう切り出したのはサザエでした。こうして「サザエさん」らしい明るい空気が戻ってきたでした。

どこにでもいそうな普通の家族*3がいずれぶつかる壁にぶつかり、サザエさんというキャラクターを通して明るく締めくくる。「サザエさん」らしい10年後だったのかなあ、と思います。
今は家族の在り方は様々で、女だから男だから、長男だからっていう理由に人生を決められる時代ではない。令和に上演するにはいささか古いならわしが随所に散らばっていましたが、10年後のサザエさんの家は相変わらず黒電話だったんですよね。原作軸のサザエさん一家こそ現代的ではない。昭和の大家族そのもの。よくもわるくも、な側面はあれど、そこが崩れたら「サザエさん」ではなくなってしまう気がします。そこにあった黒電話こそが舞台の上にサザエさんの世界が現れるために必要だったのかもしれません。

2.5次元若手俳優の専売特許ではない

当たり前だけど!

舞台「サザエさん」はまぎれもなく2.5次元でした。原作(アニメ)の世界観とキャラクターの再現度が高くて、ハイクオリティないわゆる2.5次元を初めて観た時と同じ感覚になりました。


まず世界観の再現で言うと、舞台のサザエさんは"原作のストーリーを忠実にたどる"ではなく"原作に忠実にオリジナルストーリーを作る"でした。同じところで言うと、刀剣乱舞やヘタミュがそう。原作のストーリー量が膨大なもの、あるいは曖昧なものほどオリジナルストーリーになるのだと思います。
こういったものはオリジナルによって世界観を忠実に再現する必要がありますが、刀剣乱舞ヘタリアは主義主張=主なメッセージだったりキャラ同士の関係性だったり、そういったものから"ああ、あの作品の世界だ"と感じることができます。
今回、サザエさんの(令和にしては古いかもしれない)家族のならわしいい意味で普遍的なストーリーよく起こるできごと(財布を忘れたと勘違いするサザエ、熱いお茶をそのまま飲むカツオ、など)、キャラクターの位置づけ(みんなで一緒に暮らしたいと泣くタラちゃん、家族生活を思い出して一人でひっそりと涙するサザエ、一人暮らしを決意するカツオや留学に挑戦するワカメ、そんな二人ときちんと向かい合って話をするフネさん、など)に世界観の忠実な再現を感じました。

そしてキャラクターの再現ですが、これがすごかった!もうみんな、いる!あの家族がいる!
思ったまま言いますが、今作のキャストの中でも荒牧さんと大平さんは原作モノの舞台に関して言えばその場数が抜きん出ていますよね。だからやっぱりすごかった(小並感)
けれど同じくらい、他の皆さんもすごかったです。キャラクターの再現度が、単に一人一人ではなく作品を通して、高いなあと思いました。喋り方とか振る舞いとか、すっごく忠実!でもちゃんと10年後!
なんかね、当たり前かもしれないけれど、2.5次元若手俳優の専売特許ではないんだって幕が上がってすぐにふと思ったんです。2.5次元はその特性上やっぱり若い人がメインの舞台になるし客層もそう。でも、それだけなんですよね。だって作る側にとって原作(アニメ)を舞台化する以上はきっとやることは同じだろうし、題材とか役者とか客層とかは関係ない。2.5次元が若い人のフィールドだとは決まっていない。名だたる方々が出演している今作ですが、皆一様に"役者"なんですよね。

ここからは2.5次元をそれなりに観てきてそれなりに愛しているオタクの戯言です。
もしも舞台「サザエさん」が10年前に上演していたらどうでしょうか。こんなに再現度が高かったとは言い切れないです。わたしが今作を観て、ああ、2.5次元だ!と感じたのは、その元になる比較対象があったから。わたしが観てきた2.5次元で感じたことをそのままサザエさんにも感じたということは、つまりそういうことです。原作モノの舞台化(=2.5次元)のノウハウは(アイアで上演されるような)いわゆる2.5次元の世界で蓄積されてきたはず。先日テニミュ全立を観に行った時に感じた技術の進歩はこの10年以上をかけて形成された結晶。こういった世界で蓄積されたもの、原作を舞台化するノウハウが舞台「サザエさん」でも活かされていたのではないかなと思います。時代の賜物だ。2.5次元は今や世界に誇る日本の舞台文化だーなんて言いますが、その今だからこそサザエさんはこれだけの再現度で楽しませてくれたのだと思います。
そういえばオープニングでサザエさん一家が一列にならんで歩いてスクリーンの裏に消えていき、そのスクリーンにはアニメのオープニングのあの映像がそのまま使われている。それを見た瞬間、2.5次元だ!!!って心の中で叫びました。そういうことやりがち!無条件にテンションが上ります。オタク、原作モノの舞台で一番テンション上がる瞬間ってオープニングでしょ?オープニングですべてが決まると言っても過言ではない。いい舞台はだいたいオープニングでの気持ちのアガり方が違うって相場が決まっています。

舞台のサザエさん、と~っても楽しい2.5次元舞台でした!開演前に記念写真の撮影を頼んできたおばあちゃんがたとお話がしたいです。サザエさんが、フネさんが、そこにいませんでした?って。きっとみんな感じることは一緒で、様々で、観劇後に語りたい欲はいつだって止まらないなあと思うのでした。

個人的雑感・まとめ

荒牧さんのFCでチケットを取ったので荒牧さんのファンの気持ちで観に行くことになりました。そのつもりはなかったけれどいざ始まるとFC席が故にそんな気持ちになってしまった…。
外見はどこからどう見ても荒牧さんで、カツオには見えない(というか10年後のカツオがああなっててもおかしくはないので判断はしかねる)けれど、間違いなく磯野カツオだったんですよね。すごい。観る前は、こんな顔のいいカツオなんてモテるでしょうに……って思っていたけれど、これはモテなさそう(ひどい)(褒めてます)!でも隠れファンはいそうだよね。なんたってカツオだし、顔が荒牧さんだし。
でもほんとうに、得意げな態度を見せたり語尾に汗マークの絵文字でもついていそうな喋り方をしたり、とにかく磯野カツオがそこにいた!やっぱりすごいや…となりました。僕の決意は堅いのだという爆発力とかタラちゃんに10年前とは違うんだって言うカツオとか、大学をきちんと卒業するためにしばらく休みをくださいとバイト先の店長に伝えたあとの笑い方とかも、やっぱりすごいや…となりました。エーステ秋冬の劇中劇でも思ったけれど、荒牧さんの無垢な笑い方が好きすぎます。いちいち沸いた。
ファンは楽しいだろうな~~!いいな~!!と思ってしまいました。だからって推しのおたくをやめる気はないの、なんだろう、この感覚……

舞台「サザエさん」、お茶の間で見ていたあの日常の世界を劇場という非日常の空間で浴びるのがなんとも不思議でした。ふらりと観に行ったけれど、高揚感はあったしひさしぶりに一つ一つを見て考えてまさかの5000字超えの感想文を書いて(!)、特別な一日になりました。サザエさんについてこんなに考える日が来るとは思わなかったです。

博多座でなんだかオタクとしての気持ちをリセットできた気がします。
来月からようやく推し事ライフがはじまるので、一つ一つを楽しんでいきたいです!


常時募集中!
odaibako.net
marshmallow-qa.com

*1:ワカメ

*2:カツオ

*3:普通ほど特殊であるというのは前提として